年金制度崩壊する?しない?【年金100年安心のカラクリ】

年金の2000万問題で与野党がいろいろと対立している中、国民の多くは「年金が貰えない」、「年金制度はすでに崩壊している」、「今後の年金はどうなるの?」といろいろな不安や疑問などを抱えていると思います。
そんな中、与野党は以下のようなやり取りをしています。

野党:「年金100年安心はウソだったのか」
与党:「100年安心はウソではない」

上記のやりとりはニュースでも話題になっているので皆さんがすでに拝見していると思いますが与党は「ウソつくな!」と思っている人が大多数だと思います。
ですが与党が「100年安心はウソではない」と言っているのにはカラクリがあります。
今回は年金制度が100年安心と言われている理由を解説します。

 

1.年金制度は100年安心?
2.マクロ経済スライドとは
2.1スライド調整率とは
2.2物価・賃金の上昇率が高いとき
2.3物価・賃金の上昇率が低いとき
2.4物価・賃金の上昇率マイナスのとき
3.今後どうなるか?

1.年金制度は100年安心?

与野党で年金制度が「100年安心はウソだ!」、「100年安心はウソではない」という議論を続けていますが、そもそも「年金100年安心」が指している対象と意味合いが異なることが大きな問題となっている。

与党としては年金だけで国民の一人一人が100歳まで安心して生活できることを指しているわけではない。
与党が「100年安心」と指しているのは年金制度そのもののことでそこに国民を含め野党とも認識の違いがあるために今、このような大きな問題となっている。

正直、今更「100年安心」の指している対象が年金制度そのものというのは言い訳にも聞こえるがそれがもともとの与党の言い分である。
個人的には今はなき民主党に所属していた議員も今の与党を攻めるだけでなく、自分たちにも責任があるという認識で議論をしてもらいたいと思っている。
なんせ年金は今始まった制度ではなく、政権交代したときも制度として動いているからです。それをほったらかしにしておいて今の与党になったから責任追及するというのは国民ファーストではなく、単なる選挙に勝つためもしくは今の与党を引きずり下ろすためのパフォーマンスにしか思えない。

ここで1つ疑問を感じた人もいると思います。
「年金100年安心が指している対象が違うといっても年金制度は崩壊しているもしくはこれから崩壊するんじゃないの?」と思ったかもしれません。
そこには2004年の年金改正で導入された「マクロ経済スライド」という仕組みが関係しています。

2.マクロ経済スライドとは

2004年の年金改正では現役世代の保険料負担が重くのしかからないように、保険料の上限を法律で決定しました。
この改正により2017年度で年金保険料はすでに上限に達した状態となっている。

現役世代の保険料負担額の上限を決めたものなので、仮に寿命が伸びたり・少子高齢化が進んだ場合には給付する額を減らしたり調整する必要があります。
この給付する水準を調整するのが「マクロ経済スライド」です。

年金額は物価や賃金が上昇すると増える仕組みになっていますが、マクロ経済スライドでは一定期間の年金額の伸びを物価や賃金が上昇するほどは増やさないための調整をします。
そうすることで現役世代が支払った保険料などの財源範囲内で給付を行い、長期的に年金制度の安定化を図るものです。
この「長期的な」という部分が「おおむね100年」という試算になっているため与党は「100年安心」と言っているわけです。

では具体的に「マクロ経済スライド」を説明します。

さきほども説明しましたが年金は物価や賃金の上昇に合わせて年金給付額も上昇します。
ですが負担する側と受け取る側がいますが少子高齢化や人口減になるとバランスが崩れます。そこで「スライド調整率」というものが適用されます。

2.1 スライド調整率とは

「保険料を支払う人口の減少割合」と「平均余命の伸び率」から年金を調整したもの。
例で言うと2015年では「保険料を支払う人口の減少割合」が0.6%、「平均余命の伸び率」が0.3%で0.9%の調整率でした。

この「スライド調整率」が物価や賃金の上昇率から引かれる仕組みになります。
例えば物価・賃金上昇率が3.0%で、スライド調整率が1.5%の場合、年金の上昇率は以下となります。

3.0%(物価・賃金の上昇率)-1.5%(スライド調整率)=1.5%(年金の上昇率)

ですがスライド調整に関しても以下 の3パターンがあります。

物価・賃金の上昇率が高いとき

物価・賃金の上昇率が低いとき

物価・賃金の上昇率マイナスのとき

それぞれ解説します。

2.2物価・賃金の上昇率が高いとき

これは純粋に年金給付額からスライド調整率が引き算され、引き算されたものが年金の実際の上昇率になります!

2.3物価・賃金の上昇率が低いとき

スライド調整額よりも小さくなることはなく、年金の上昇率は0%という結果になります。

2.4物価・賃金の上昇率マイナスのとき

物価・賃金の上昇率自体がマイナスだった場合、そのマイナス分が年金上昇率に適用されます。
なのでスライド調整率の適用はなくなります。
例として物価・賃金の上昇率がマイナス1%だった場合、年金の上昇率もマイナス1%になります。

 

スライド調整に関する3パターンをご紹介しましたが、「物価・賃金の上昇率が低い」ときには「キャリーオーバー制度」というものが適用されます。
例えば物価・賃金の上昇率が0.5%でスライド調整率が1.0%の場合

0.5% ー 1.0% = マイナス0.5%

となります。

なので先程説明したスライド調整率の仕組み上、マイナス0.5%分は年金給付額からマイナスされません。
ですが、キャリーオーバーという仕組みが開始されたためマイナス0.5%に関しては何年後かで適用される場合があります。

例えば2年後の物価・賃金の上昇率が2.0%でスライド調整率が1.0%の場合

2.0% ー 1.0% = 1.0%

普通に計算すると1%年金給付額アップになりそうですが、キャリーオーバーが適用されるためマイナス0.5%が差し引かれます。

1.0% ー 0.5% = 0.5%

ということで最終的な年金給付額の上昇率としては1.0%ではなく0.5%になります。
簡単に言うともらえる年金額が減るということです。

3.今後どうなるか?

今後、少子高齢化や人口減が進むとどうしても年金を負担する側と受ける側のバランスが崩れるためもらえる年金額は減っていくと考えられます。
ただ、マクロ経済スライドが適用されるので年金制度としてはしばらく制度としては問題ないです。
これが「年金100年安心」というカラクリです。

ただ、給付額が減ると貧困状況に陥る高齢者、高齢世帯が増加することも生活が苦しくなると生活保護の対象者として高齢者が増えることも大いに想像ができます。
そうなると年金より生活保護がもらえるからといって大勢が生活保護ということにもなりかねないと思います。
今から資産運用、副収入を含め検討する必要がありそうです。